山田聡昭

自家醸造が禁止されたのは1899年。以来、どぶろくは表舞台から消え、密造酒として伝えられてきた。再び表舞台に現れたのはほぼ1世紀後の2002年。構造改革特別区として「どぶろく特区」が誕生し、いまでは全国各地に200近いどぶろく特区がある。

どぶろく農家を訪ねると、厨房に仕切りを設けて、あるいはプレハブの醸造小屋を建てて、20Lくらいの寸胴鍋にどぶろくをつくっていた。酒蔵とは規模も設備も雲泥の違い、プロとアマチュア、大人と子供である。かつて自宅でつくっていた時も同じようなものだったであろう。

今も趣味でこっそりつくる人もいる。何の縛りもないから皆自由につくる。フルーツや香草、豆や雑穀を加える人もいれば、粗く濾す人もいて、「どぶろくは米と米麹と水が原料で濾さない……と説明したのは間違いだったか」と思えてくる。

ひとつ確かなことは、稲作とともに日本に伝わった酒はどぶろくだったということだ。以来、長く、それは長く飲み継がれてきた。中世にはすでに市場で売られている麹を見て、涎を流す人がいるほど浸透していた。飲まれたのは神々との交流のためか、集団をまとめる共飲だったか、ひょっとすると気持ちよくなる粥だったのかもしれない。

もうひとつ確かなことがある。そう、どぶろくを取り戻すことで、日本の酒文化は豊かになるということだ。「どぶらぶ(どぶろくを愛でる会)」はそのためにあると思っている。


profile

山田聡昭

【プロフィール】
1986年武蔵大学を卒業。マーケティング企画会社を経て、1991年株式会社酒文化研究所の設立に参加。酒類業界専門のコンサルタントとして活動するほか一般向けのコラムも執筆。また、さまざまな酒類コンテストやプロモーションイベントを企画運営している。

【編集・執筆】
・酒文化研究所会員向けの機関誌『酒文化』の編集長(1996年~)
・「週刊新潮」グラビア企画「アジア酒街道をゆく」執筆(2005年1年間)
・一般向けフリーマガジン『さけ通信』を編集、発行(2007年~)
・アサヒビール『業務用酒販店ビジネストレンド』連載(2015年~)
・『食品商業』月間販促企画リカー連載(2012年~)
・全国酒類業務用卸連合会 研修テキスト執筆

【著書】
国税庁酒税課『経営改善計画実施マニュアル』2004年(共著)
酒文化研究所編『酒と水の話-マザーウォーター』紀伊国屋書店2003年(共著)
酒文化研究所編『酒席に役立つ読む肴』紀伊国屋書店2001年(共著)
加護野忠男・石井淳蔵編著『伝統と革新 -酒類産業におけるビジネスシステムの変貌』千倉書房1991年(共著) ほか

【コンテスト・イベントのプロデュース等】
・日本酒チャンピオンズカップ(カップ酒コンテスト)(2005年~2008年)
・全国燗酒コンテスト(2009年~)
・どぶろくフェスタ(濁酒コンテスト)(2010年・2012年)
・ワイングラスでおいしい日本酒アワード(2011年~)
・JR両国駅イベント「熱燗ステーション」(2019年)
・世界酒蔵ランキングチェアマン(2019年~)

【コーディネート等】
・Kura Master企画サポート&日本側窓口(2017年~)
・日本酒造組合中央会「Japan Sake & Shochu Academy」事務局(2017年~)
・ミラノ酒チャレンジ企画サポート&日本側窓口(日本側窓口)(2019年~)


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